現代の金融入門

 

現代の金融入門 [新版] (ちくま新書)

現代の金融入門 [新版] (ちくま新書)

 

金を稼ごう→経済ニュースを見よう→経済の常識がない

ということで経済学の勉強をはじめました。

2016年の頭にKhan Academyでミクロ経済学マクロ経済学、金融と一通り通したんですが、まともなテキストに挑む前にそれぞれ一通り日本語の薄い本を通すところからスタート。

マクロ経済学の方がより理解が浅いかな?と思い、 『マクロ経済学 -- 入門の「一歩前」から応用まで』という本を買ってみました。表題の本は以前から積んでた本で、金融部分に関する副読本として並行して参照して、先に読み終わったので書評を書いておきます。

 

目次的には前半は金融取引の意義から入って銀行システム、中央銀行の役割と紹介していきますが、ここまでは普遍的な説明を心がけているようで具体例が乏しい、というかほぼありませんでした。「一歩前」の方が日本のシステムを例にとって説明していたため理解の助けになりましたが、以前この本を買ったときは自分の中に例を持っていなかったので前半で読むのをやめてしまっていた記憶があります。しかし、信用創造のメカニズムについての説明はより詳しく載っていたり、副読本としてはかなり相性がよかったと思います。

後半は資産価格の決まり方とバブル、日本の企業統治、金融機能のunbundling、金融規制と続きます。最終章以外のそれぞれの章に対応して日本のバブルとその崩壊、バブル以後の企業統治、米国のサブプライムローン問題を事例として取り上げています。各章ごとの構成はよく練られていると感じました。例えば「資産価格とそのバブル」の章では資産のファンダメンタル価値(その資産がもたらすキャッシュフロー流列の現在価値)を導入した後に、ファンド管理者などの代理人と資金提供者である依頼人の立場の違いから発生するインセンティブの歪みや裁定行動の限界によって資産のミスプライス=バブルが発生・持続するといったように、前提知識のないところからバブルやその崩壊の構造が理解できるようになっています。同様に「金融機能の分解と高度化」の章ではIT化により外部組織との分業コストが下がったという背景をもとに、様々なリスクが証券化されたことによって銀行以外のプレーヤーが関わった複雑なリスクの取引が行われ、同時に銀行に対して存在していた金融規制を免れていたことがサブプライムローン問題が全面的な金融危機に発展した原因として説明されます。

2010年初頭に刊行された本なので、リーマンショック後の各国の中央銀行の非伝統的な金融政策などについては記述が薄いですが、全体としてある程度時系列に沿った章立てになっていると言えるので、これらの記述を入れると構成が難しくなるかもしれないですね。

 

自分がたまたまそうしたように、マクロ経済学の入門書の副読本として用いる使い方にはかなり向いている本だったと思います。あくまで(ひとつの経済に関する)金融に関しての入門本なので、具体的な金融商品であったり投資、また為替やそれに関連する中央銀行の行動などについては記述がほぼありません。そういった目的にはまた別の本を参照する必要があると思います。しかし自分の場合にはそういった本やニュースなどから入っていまひとつ理解が進まないという状況があったので、必要なバックグラウンドを身につけるという目的に適う本でした。

マクロ経済学 -- 入門の「一歩前」から応用まで (有斐閣ストゥディア)

マクロ経済学 -- 入門の「一歩前」から応用まで (有斐閣ストゥディア)